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学長メッセージ

潜在的な表現力を さらに輝くものに

新しい価値観を示す 個性あふれる「創造の現場」
少人数教育で学ぶ実技と理論?社会への広い関心と柔軟な思考を育む

京都市立芸術大学(京都芸大)は、創立140周年を超える日本で最も長い歴史を持つ芸術系の学校です。明治初期の京都。幕末からの戦災や遷都によりまちが衰退していた1880年、復興を目指す若い絵師たちの思いを集めて、京都府画学校が設立されました。そして1952年、戦後の復興期に京都市立音楽短期大学が誕生しています。本学は、真に厳しいとき、苦しいときにも変わらず芸術教育に力を注いできた京都の人々の想いに応え、創立以来芸術を志す学生たちの夢や思索をかたちにし、世界の人々に届けてきました。伝統文化を守りつつ、常に新しいものを取り入れて、まちを活性化させてきた京都。その土壌に学び、さらに新しい価値観を示しながら、本学は日本の近現代芸術の屋台骨を支えるアーティストたちを脈々と輩出してきました。

京都芸大は、常に「創造の現場」です。私たちが学生に求めているのは、芸術や文化に対する好奇心、表現することへの強い意欲、柔軟な思考力、あふれる個性です。一学年が両学部合わせて200人の小規模な大学ですが、この規模だからこその「質の高い少人数教育」と、学部や専攻、実技と座学の「垣根を越えた横断的教育」を行っています。作品制作や演奏のためのテクニックや感性を磨く「実技教育」と同時に「理論教育」も重視します。学生が感性や直感のみに頼らず、広く社会に関心を持ち、思考するように導き、潜在的な表現力をさらに輝くものに育てていくのが本学の教育です。

今、先が見えないといわれる時代に、芸術や文化の力が大きな注目を集めており、社会や産業のイノベーションに、デザイン思考、アート思考が必要とされています。芸術には変化に対応していく柔軟さがあり、困難を乗り越える力があるからです。卒業生たちは、国内外の芸術界、産業界で活躍していますが、いわゆる芸術家のみならず、新しい価値観を生み出す力を持った人材として、社会のさまざまな分野でその力をふるっています。「無」から生み出すことを学んで身につけた想像力や豊かな表現力を発揮しているのです。

2023年10月1日、京都芸大のキャンパスは、京都の玄関口である京都駅近くへ全面移転しました。新しい校舎には、オーケストラやオペラ、アンサンブルなど多様な編成に対応できるよう、最適な音響空間を確保したサイズの異なる音楽ホール「堀場信吉記念ホール」「笠原記念アンサンブルホール」や、金属や木材などさまざまな素材の加工が可能な「共有工房」も整備するなど、学生が持てる力を存分に発揮できる環境を用意しました。

キャンパス移転という節目に、未来に向けた新たな大学像を「TERRACE」と定めました。まちに開かれたテラスは、地域の歴史や文化と緩やかにつながりながら新たな「創造の現場」となり、さまざまな人々や機関との交流を通して、その刺激や情報を教員や学生が作品や演奏、研究に昇華させていく。そんな活発な芸術の拠点になります。

学生は京都芸大で、高い志を持った仲間たちと出会い、アーティスト、音楽家、研究者である教員と出会います。お互いに高め合いながら芸術を学び、創造力を磨く、そんなすべての体験は、社会に出てからの自信となり強みになります。人生を豊かにする方法を考え、将来の可能性を探っていく大切な学生時代、ぜひ京都市立芸術大学でしっかりと学んで、皆さんの夢の実現につなげてください。

赤松 玉女(あかまつ?たまめ)

略歴

画家。1959年兵庫県尼崎市生まれ。1984年に京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻(油画)修了後、国内外の美術館やギャラリーでの展覧会を中心に活動。油彩、水彩、フレスコ技法など、画材や技法を組み合わせた絵画表現の可能性を研究。イタリアでの創作活動などを経て、1993年に本学美術学部美術科油画専攻教員に着任。2018年度から本学美術学部長。2019年4月から現職。2020年度尼崎市民芸術賞、2021年度亀高文子記念―赤艸社賞。